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言語の冗長性

 日本語や英語などの自然言語は、それぞれ異なるレベルの冗長性を有していると考えられます。例えば、日本語の場合、口語では、「明日、東京行く?」や「今日、何食べる?」のように、助詞やその他の文法的要素が省略されることが多いです。これを丁寧な文章語にすると、「あなたは、明日、東京に行きますか?」、「今日、あなたは、何を食べたいですか?」のように、「に」や「を」などの助詞が補われ、文も長くなります。このように、実際には省略しても意味が通じる要素(情報)が付加されるわけですから、日本語の文章語は、冗長性が高いと言うことができると思います。もちろん、英語や中国語でも口語における省略は行われますが、日本語に比べれば、英語や中国語は、口語と文章語がかなり近い言語であると考えられます。  ドイツ語には、名詞に男性・中性・女性の区別があり、これらの性と名詞の格によって冠詞が変化し、動詞も複雑に変化します。このような「規則の多さ」も冗長性の高さと考えることができます。英語とドイツ語は兄弟のような関係がありますが、現代の英語には、このような名詞の性も複雑な格変化もありません。ドイツ語も英語のように性を廃止し、格変化を単純化しても、コミュニケーションに支障はなさそうに思われますが、ドイツ語が英語のように単純化されないことには、それなりの理由があると考えられます。  情報工学の分野では、情報を冗長にすることで情報の堅牢性(ロバストネス)が高まることが知られています。すなわち、冗長性が高いほど、情報を確実に伝えることができる可能性が高まります。また、冗長性を高めることで、表現の自由度も高まると考えられます。日本語は、格助詞によって名詞の格を明示するため、「彼が屏風に絵を描く」、「彼が絵を屏風に描く」、「屏風に彼が絵を描く」といった具合に、かなり自由に語順を入れ替えることができます。ドイツ語は、格助詞は有していませんが、冠詞によって名詞の格を明示するため、やはり、語順の自由度は高いようです。

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