消えた発明
- ito017
- 2016年8月15日
- 読了時間: 2分
特許明細書は、発明を説明するものでありますから、当然、「発明」という単語が多く使用されています。米国明細書でも「this invention」、「the present invention」など、inventionは、何度も明細書に登場する単語でした。しかしながら、近年、特に米国では、特許明細書であるにもかかわらず、明らかに「invention」の使用を避けている書き手が増えました。本発明にあたる部分を「the present disclosure」、「the present application」などとする傾向があります。これは、米国において「inventionに関する包括的言及は、発明の範囲を限定する」といった趣旨の判例が出てしまった影響のようです。簡単に言えば、Technical fieldの部分に「This invention relates to a processor.」とだけ書いてある場合、実施形態として、フローチャートを用いて、しっかり方法が説明されていても、このTechnical fieldの記載によって、この発明は方法(method)を含まない、と解釈されてしまうおそれがある、という警戒感があるようです。 これは、あまりに乱暴な解釈で、米国の特許に関するBBSなどでも、inventionをdisclosureに変更することに意味があるのか?といった論争も見受けられます。日本語でも「本開示の実施形態は、」などとすることには、これまでの感覚からすると抵抗感があるのですが、米国代理人たちの判例に対する敏感な反応には、時々驚かされます。 日本国内明細書では、「発明」という単語にここまで神経を尖らせる必要はないのかもしれませんが、米国出願を予定する明細書では、翻訳者が発明をinventionと訳したことによって、発明の範囲が不必要に限定されてしまう可能性を回避するために、明細書内の「発明」の包括的言及については、注意を払う必要があるかもしれません。
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