これは誰の本?
「の」は、通常、所有格を表す格助詞です。「父の本」は、「父が所有する本」と解釈することが自然です。しかし、もし、話し手の父が太宰治だったらどうでしょう。「父の本」は、「父が書いた本」かもしれませんし、「父について書かれた本」の可能性もあります。「の」は、広義に解釈でき、便利な助詞なので、どうしても多用したくなりますが、その反面、実際の意味を曖昧にしてしまう可能性を孕んでいます(英語ではofがこれに近い性質を有しています)。 単純な所有格の意味では、「の」を使うしかない状況が多いわけですが、「の」にそれ以外の意味を持たせている場合は、「太宰治が書いた本」、「太宰治の作品に関する本」のように、面倒でも誤解がないように書いた方が、読み手にとっては親切なのかもしれません。