朝日のあたる家
現代語では所有格の格助詞である「の」と、主格の格助詞である「が」は、古語では逆だったという面白い現象があります。「君が代」は、現代語で訳せば「君の代」ですし、「苔のむすまで」は、「苔がむすまで」となります。「の」と「が」が担当を交換した理由はよくわからないのですが、古語の用法の名残は今でも文章語に残っています。「朝日のあたる家」は、「朝日があたる家」と言ってもいいわけですが、何となく、前者の方が格調が高い気がします。このような、主格に相当する「の」は、現代明細書ではあまり用いられていないようです。 ただ、特許庁自体も「発明の属する技術分野」という表現を用いています。「発明が属する」と言わず、「発明の属する」と言った文語的表現を用いているのは、格調のためなのかどうかはわかりません。「の」は誤解を生じやすい格助詞でありますので、明細書の本文などでは、「の」に主格を担当させることは避けるべきでしょう。まあ、注意するまでもなく、「発明の属する」的な古めかしい表現を使用する人は減っていると思いますが…。