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小さな大問題(2)

 先のブログでは、Oxford commaは、英国より米国で普及している、と書きましたが、これは、イギリス英語とアメリカ英語の違い、と言えるほど単純な問題でもありません。米国でも、ニューヨーク・タイムズをはじめ、多くの新聞社は、Oxford commaを採用していません。私も、これまで多くの米国明細書を読んできましたが、米国人でも不採用派の方が多い気がします(個人の感想です)。  一方、「イヌと猿」というタイトルのブログで紹介した「シカゴマニュアル(The Chicago Manual of Style)」は、このOxford commaの使用を「強く推奨」しています。この他にも、Oxford commaの使用を勧めるスタイルガイドは多くあるようです。  OxfordやChicagoがOxford commaを推奨する一番の理由は、フレーズの曖昧性を回避できるためです。例えば、両親と、太郎くんと、花子さんの合計四人を自宅に招待した場合、my parents, Taro and Hanakoと書くと、コンマが同格のコンマと誤解され、my parents = Taro and Hanakoと解釈されるおそれがあるというわけです。このような誤解は、my parents, Taro, and Hanakoのように、Taroとandの間にコンマを入れれば、回避できます。  この理屈は一見正しそうに見えますが、Oxford commaを使用することによって別の誤解が生じる可能性もあります。この問題は、書き出すとキリがないので、興味がある方は、Oxford commaで検索して、色々調べてみて下さい。  私は、これまで、悩みながらも、Oxford commaの採用を見送ってきました。個人的な感覚ですが、Oxford commaを採用すると文章の見栄えが悪くなる気がします。上に示した誤解の問題も、例えば、Taro, Hanako and my parentsなどと名詞の順番を変更するなどの工夫によって解決できます。  しかしながら、同僚の米国人は、頑なにOxford commaの採用を主張してきました。私も、この問題に関しては確信がないので、議論の結果、私の方が妥協する形で、弊所では、今年から、Oxford commaを採用することにしました。  ちなみに、Vampire Weekendというロックバンドの「Oxford comma」という楽曲には、「誰がOxford commaなんかを気にするんだ」というような意味の歌詞が登場します。そう言われてしまうと返す言葉もないのですが...。

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