「based on」の副詞的用法
- ito017
- 2022年6月22日
- 読了時間: 2分
今回は、翻訳者にとって悩ましい「based on」に関する話です。
原文:システム100は、その情報に基づいて、パラメータを調整する。
訳文:The system 100 adjusts the parameters based on the information.
この訳文に違和感を感じる方はどれくらいいるでしょうか? この文では、based on は、adjusts(動詞)を修飾しています。すなわち、副詞的用法です。
based onのこのような用法は、厳密には、誤用です。
The parameters are based on the information.
この場合、based on the informationは、parametersの補語(形容詞的用法)にあたり、これは正しい用法です。based on は、名詞を修飾する形容詞句を形成することができますから、「情報に基づくパラメータ」という意味なら、「the parameters based on the information」は、OKです。「情報に基づいて調整する」のように、動詞の修飾句としては(本来)使えません。
シカゴマニュアルでは、based onを「~に基づいて」の意味で使用する副詞的用法は、illegitimate(正当ではない)であり、slipshod(杜撰である)と指摘されています。「~に基づいて」の意味では、based onではなく、on the basis ofなどを使用する必要があります。
MPEPを全文検索して調べてみましたが、based onは、例えば、"rejection based on ...(~に基づく拒絶)"のように、名詞を修飾する形容詞用法としてのみ使用され、「~に基づいて拒絶する」といった副詞句としては、on the basis of が使用されています。すなわち、MPEPは、シカゴマニュアルに従っています。
…と、ここで話が終われば簡単なんですが、現実の特許明細書では、誤用とされるbased onが多用されています。以下は、「明細書の自動作成」で紹介した米国特許US10572600B2号のクレームの一部です。
"determine, based on the at least the portion of the patent claim, a first data structure representing ..."
このbased on は、動詞determineを修飾しており、シカゴマニュアルに従っておりません。本来誤用であるはずの表現を多くの人が使用することによって、許容度が高まり、誤用だと断定できなる事例は多くあります。厳密な文法に従うか、慣用を許容するかは、悩ましい問題です。
*注釈:前記クレームの抜粋において、based on をon the basis ofに訂正(?)することは可能ですが、basisに先行詞がないため、on a basis ofにするべきじゃないか、といった更にややこしい議論が浮上する可能性があります。
based onは、the basisに関する冠詞の議論を引き起こさないため、特許では、based onが好まれる、という考え方もあります。
最新記事
すべて表示2023年も残り僅かとなりました。今年は、生成AI(Generative AI)が大いに注目された年でした。特に、ChatGPTをはじめとするテキスト生成AIの目覚ましい進歩は、我々の仕事にも影響を与えそうなので、既に色々お試しになっている方も多いかと思います。...
前回のブログ「明細書の自動作成」で紹介した米国特許US10572600B2号は、「符号がついている名詞に定冠詞をつけない」というフォーマットで書かれています(以下抜粋)。 "FIG. 1 illustrates a system 100 configured for...
二十数年前、特許事務所在籍時代に特許明細書を自動作成できないかと考えたことがあります。アイデアの骨子は以下のような感じです(文章で説明すると長くなるので、大雑把に書きます)。 【入力】 従来の構成=P 発明の特徴=I 効果=E 【出力】...
Comments